エンダーのゲーム
- 作者: オースン・スコット・カード,Orson Scott Card,野口幸夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1987/11/01
- メディア: 文庫
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このところ過去の名作SFをよく読むようになった。
もともとSFは好きではあるんだけども。
古くなったSFって……という気がなかったわけでもない。それに、どれもどうせ小難しいんだろうなぁと大分長い間ご無沙汰だった。
10年くらい前、エヴァ全盛期。エヴァの結末は月が地球に落ちる予定だったなんていう裏話をラジオでむさぼり聞いていたあの頃に買ってそのまま放置してあったハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』を、数ヶ月前にたまたま発見して読んで、小難しさがはるかに霞むほどの「先が気になる面白さ」を堪能してからは、ハヤカワ文庫の『SFハンドブック』(これも当時のもので、今売ってる方じゃないちょっと古めの)を参考に「幼年期の終わり」「夏への扉」と梯子した。
で、今日読み終えたのが『エンダーのゲーム』。
なんでこれを手に取ったのかはいまいちよく覚えてないんだけど(買ったのは1ヶ月くらい前)、長いのを覚悟で読んでみるとこれがまた最高に面白かった。
映画化はされてないのかな。早いトコどこぞの天才子役を使って感動巨編を作っておくれよと叫びたくなる完成度。
幼い天才少年エンダーが周りの大人に利用されながら優秀な戦争指揮官となっていく話なんだけど、前半と途中にはさまれるエンダーの兄弟のエピソードが最後に生きてくる。それも含めて、様々な伏線がしっかり効いていて、最後にきっちり消化されるあたりも気持ちいいし、なにより大人に翻弄されるエンダーに嫌でも共感を覚え、おもわず応援したくなる。エンダーと一緒に大人に対してカッとなれる。作中で結構な月日が経つけれど、それでも12歳とかそこらで最後に凄まじい業績を残すエンダーのヒーロー像にわくわくした。
反対に大人たちはやむを得ず憎まれ役を演じるわけだけれど、それでもやっぱり憎めないところがあってうまいと思った。感情をわざと捨てているのが良く分かる。もし映画化されたら、ベテラン俳優の名演技を心底望むところですね。
やっぱりね。どんな小説でも先が気になるかどうかっていうのがかなり僕の中では大きなウェイトを占めている感じ。
それで判断すると、上で述べた『月は無慈悲な夜の女王』が最強レベルだと思う。『スキズマトリックス』と『幼年期の終り』は、それぞれ名作とは思うけどこの部分が弱くて個人的には1段下に思えた。
先が気にあるといえば『夏への扉』も相当なものだったけども、どちらかというとあれは結末の感動の方が印象的で。
で、このエンダーのゲームは敵として設定されている『バガー』と戦うに当たって、いきなり大それた事を始める兄弟のエピソードやら、ワルシャワ条約機構なんていうきな臭い話といった一見関係ない話が随所で登場して、伏線とは分かっているんだけどこれが『バガー』退治に一体どう関係するのかとんと見当がつかなかったから、とにかく早く先が知りたくて一気読みしてしまった。(といっても5日かかったけど)
そしたらもう。バガーとの戦争はあるトリックによって思わぬ結末を迎えるし、その他もろもろ終盤の展開が実にヨイ。特にキーパーソンとなる『ある老人』が登場する場面が一番興奮した(笑)。
大作を読み終えて、ふぅ〜……と満足感を味わっていたら実は続編があるとか。
あわわあわわ。読まないと。
余談だけど、表紙はカルドでも多数のカードイラストを手がける加藤直之氏だし、バガーはどうやらカルドの「ハイブクイーン」「ハイブワーカー」の元ネタくさい。
カルドにはこないだ読んだマルドゥック・スクランブルの表紙を描いた寺田克也氏も参加していたし、いろいろ繋がってるね。
余談のあとは蛇足だけど、いくつか本の名前が出たので、それぞれ良かったところを並べてみる。
『エンダーのゲーム』
少年エンダーのプラスマイナス双方向への頑張る姿を見守る楽しさと、伏線の驚き。
『夏への扉』
どん底からの大逆転ハッピーエンドの余韻が好き。
『月は無慈悲な夜の女王』
着々と進行する革命が最後に成就する一連の課程を追う楽しさ(初読時限定の楽しさかも)。あと、終わり方がせつなくて好き。
『幼年期の終り』
ビックリ展開(笑)
いまさらだけど、SFって名作がたくさんありますね。
SFのファン層の平均年齢は毎年1ずつ上がっていくなんていうことを聞いたことがあるけど、結局SF自体は映画化されて一般の人も楽しんでいるわけで。
とにかくこれらの名作は評価通りの面白さを素直に楽しめました。